
「全部のくじを取れば、本当に当たりが入っているのか分かる」
そんな単純で、誰も簡単には実行できない検証に挑んだのが、YouTuberのヒカルさんでした。
約7万円を使い、くじ付きUFOキャッチャーの中身を最後まで確認したものの、出てきたのは5等とハズレだけ。
あまりにも衝撃的な結果だったため、動画は大きな注目を集めました。
ところが、その後に浮上したのが「ヒカル側が仕込んだやらせではないか」という疑惑です。
結論からいうと、公開されている動画や報道だけでは、ヒカルさんがやらせを仕込んだと断定できません。
一方で、当たりくじが最初から入っていなかったことや、店側が意図的に利用者をだましていたことについても、公的機関による最終判断は確認できていません。
何が事実で、何がまだ疑惑のままなのか。
ヒカルさんとコレコレさん、2つの検証を分けて見ていくと、騒動の本当の姿が見えてきます。
ヒカルのUFOキャッチャー動画はやらせだったのか
ヒカルさん側が企画を仕込み、当たりくじを抜いたうえで撮影したことを示す確かな証拠は確認されていません。
やらせを主張する情報は存在しましたが、その内容が第三者によって証明されたわけではないからです。
一方で、ヒカルさんの動画内では、約7万円をかけて回収したくじから上位賞が出なかった様子が公開されています。
つまり、現時点で言えるのは次の2点です。
- ヒカルさんの検証では、上位賞のくじを確認できなかった
- ヒカルさん側が意図的に仕込んだ証拠は確認されていない
「上位賞が出なかった」という結果と、「動画がやらせだった」という主張は、同じものではありません。
ここを切り分けなければ、騒動の見え方を誤ってしまいます。
騒動は高校生と店舗スタッフの訴えから始まった
発端となったのは、2022年5月にヒカルさんのYouTubeチャンネルで公開された動画でした。
大阪のスマートフォン修理店に設置されていた、くじ付きクレーンゲームが舞台です。
店舗で働いていたスタッフから、ヒカルさんのもとに「上位賞のくじが入っていないのではないか」という情報が寄せられました。
さらに、同じクレーンゲームに1万円以上を使った高校生も登場します。
高校生は上位賞が出なかったことに納得できず、本当に当たりが入っているのか確認したいと訴えていました。
| 時期 | 起きたこと |
|---|---|
| 2022年5月15日 | 店舗スタッフと高校生からの訴えを紹介 |
| 2022年5月16日 | ヒカルさんが約7万円を使って全てのくじを回収 |
| 2022年5月26日 | コレコレさんが別の設置場所で独自に検証 |
約7万円で全てのくじを回収
クレーンゲームは、100円で1回、500円で7回遊べる設定でした。
ヒカルさんは大量の500円玉を用意し、機械の中にあるくじを一つずつ取り続けます。
端に寄ってアームが届かないくじについては、店舗スタッフが機械を開け、中央へ動かす場面もありました。
最終的に使った金額は約7万円。
全てのくじを確認した結果、5等が12枚出たものの、1等から4等までの上位賞は確認されませんでした。
検証の様子は、ヒカル(Hikaru)公式YouTube動画で公開されています。
店側は「当たりは入っている」と主張
ヒカルさんは、クレーンゲームを運営していた会社の社長に電話をかけました。
社長側は「当たりは入っている」「自信がある」という趣旨の主張をしたものの、ヒカルさんが回収したくじの中から上位賞は見つかっていません。
両者の主張は最後までかみ合わず、ヒカルさん側は警察にも連絡したと動画内で説明しています。
ただし、その後に刑事事件や行政処分へ発展したのか、公的機関がどのような結論を出したのかは確認できません。
なぜヒカルに「やらせ疑惑」が浮上したのか
約7万円を使って全てのくじを確認したにもかかわらず、なぜヒカルさんが疑われることになったのでしょうか。
きっかけは、別の従業員を名乗る人物から寄せられた情報でした。
告発したスタッフが買収されていたという主張
コレコレさんのもとに、ヒカルさんの動画に出演したスタッフは買収されており、やらせ動画を撮影したという趣旨の情報が寄せられたと報じられています。
この主張が事実であれば、スタッフ側が事前に上位賞を抜き、ヒカルさんの検証を成立させた可能性も出てきます。
しかし、この情報を裏付ける契約書、金銭の記録、撮影指示などが公開されたわけではありません。
タレコミが存在したことと、その内容が事実であることは別です。
スタッフが機械を開けていた
検証中には、アームが届かない場所にあるくじを動かすため、店舗スタッフが機械を開ける場面がありました。
このため、「機械を開けた際にくじを操作できたのではないか」と疑う声も生まれました。
一方で、動画では機械の端にあるくじを中央へ寄せる目的だったことも説明されています。
機械を開けたという事実だけで、上位賞を抜いたと断定することはできません。
ヒカル本人はやらせを否定
コレコレさんがヒカルさんへ直接確認したところ、ヒカルさんはやらせを強く否定したとされています。
ただし、本人が否定したことだけで疑惑が完全に消えるわけではありません。
そこでコレコレさんは、言葉ではなく、実際に別のくじ付きクレーンゲームを買い占めて確かめることにしました。
コレコレの8万6,000円検証で何が分かったのか
コレコレさんが訪れたのは、地方のスーパー銭湯に設置されていたくじ付きクレーンゲームでした。
ヒカルさんが検証した店舗とは異なる場所です。
コレコレさんは8万6,000円を使い、機械の中にあるくじを全て回収しました。
結果は次のとおりです。
| 等級 | 確認された枚数 |
|---|---|
| 特賞 | 1枚 |
| 1等 | 0枚 |
| 2等 | 2枚 |
| 3等 | 54枚 |
特賞は出たものの、1等は最後まで確認されませんでした。
さらに、途中で運営業者へ問い合わせたところ、特賞と1等の景品を郵送するという提案があったとされています。
「当たりくじが機械の中に入っているのか」を確かめている最中に、景品だけを後から送ると提案されれば、不自然に感じるのも無理はありません。
最終的に出てきた特賞にも、通常必要とされるスタンプが押されていなかったと報じられています。
検証後、コレコレさんは、ヒカルさんについて「多分ヤラセじゃない」という趣旨の見解を示しました。
検証動画は、コレコレチャンネル KoreTube公式動画で確認できます。
コレコレの検証はヒカルの潔白を証明したのか
コレコレさんの検証は、ヒカルさんがやらせをしていなかったと考える材料の一つにはなりました。
別の場所に設置された機械でも、表示どおりの当たりくじが全て確認できなかったからです。
しかし、厳密にはヒカルさんの潔白を証明したわけではありません。
コレコレさんが調べたのは、ヒカルさんが検証した機械そのものではないからです。
分かったのは、くじ付きクレーンゲームの運用に不透明さを感じさせる事例が、別の場所でも確認されたということです。
それでも、ヒカルさんだけが作った架空の問題ではない可能性を示した点には、大きな意味があります。
店側が詐欺をしたと断定できるのか
「当たりが入っている」と表示しながら、実際には当たりが一枚も入っていなかった。
仮にそれが事実であり、運営側が知りながら利用者からお金を受け取っていたのであれば、法律上の問題が生じる可能性があります。
ただし、個別の店舗が詐欺や景品表示法違反に該当するかは、動画だけでは判断できません。
次のような事実確認が必要になるからです。
- 上位賞が本当に一枚も入っていなかったのか
- 運営側がその状態を認識していたのか
- すでに当選者が出た後ではなかったのか
- 店頭でどのような表示や説明をしていたのか
- くじや景品を誰が、いつ補充していたのか
ヒカルさんの動画では上位賞が出なかったことを確認できます。
しかし、それだけで店側の犯罪が確定したとはいえません。
「怪しい」と感じることと、「犯罪だ」と断定することの間には、大きな距離があります。
くじ付きクレーンゲームが疑われやすい理由
通常のクレーンゲームであれば、狙う景品を自分の目で確認できます。
取れそうな位置にあるのか、アームが届いているのかも、ある程度は見えるでしょう。
ところが、くじ付きクレーンゲームでは、中身を開けるまで結果が分かりません。
利用者からは、次のような重要な情報が見えない状態です。
- 当たりくじが現在何枚入っているのか
- すでに上位賞が出ているのか
- くじがいつ補充されたのか
- 当選確率がどの程度なのか
- 景品を交換できる条件は何か
高額なゲーム機やスマートフォンが並んでいれば、「次こそ当たるかもしれない」と期待してしまいます。
しかし、肝心の当たりが本当に残っているのか、利用者には確かめる手段がありません。
問題の中心にあるのは、ヒカルさんを信じるか、店側を信じるかだけではありません。
お金を払う側に、判断するための情報がほとんど与えられていないことです。
業界の自主ガイドラインでは認められていない方式もある
日本アミューズメント産業協会の自主ガイドラインでは、ゲームセンター等で提供する景品について、いくつかの基準が定められています。
景品の小売価格はおおむね1,000円以下とされ、カプセル内に景品名や記号を書いたチケットを入れ、別の景品と交換する方式も認めない内容です。
ただし、これは業界団体が定めた自主的なガイドラインです。
ヒカルさんが訪れたスマートフォン修理店や、コレコレさんが訪れた施設に、このガイドラインが直接適用されていたかは確認できません。
高額景品が見える場所に置かれていたからといって、直ちに違法だと判断するのは危険です。
店舗の営業形態、機械の仕組み、景品の提供方法などを個別に確認する必要があります。
くじ付きクレーンゲームで後悔しないために
クレーンゲームは、本来なら結果も含めて楽しむ遊びです。
けれども、「当たりが残っているはずだ」と信じてお金を使い続ければ、気づかないうちに大きな金額になってしまいます。
最初に使う金額を決めておく
始める前に、1,000円や2,000円など、使ってよい上限を決めておきましょう。
「あと一回だけ」を繰り返すと、引き返しにくくなります。
取れそうに見えることと、次に当たりが出ることは関係ありません。
当たりの状況と交換条件を確認する
高額景品を狙う場合は、遊ぶ前にスタッフへ確認することも大切です。
「現在も1等は入っていますか」
「当たりが出た場合、この景品と交換できますか」
「交換に必要な条件はありますか」
明確な回答が得られない場合は、その場で遊ばないという判断も、自分を守る立派な選択です。
不審な表示は写真に残す
表示内容と実際の説明が違う、当たりがあると聞いたのに交換を拒否されたなど、不審な点があれば記録を残しましょう。
店舗名、利用した日時、金額、景品の表示、レシートなどがあれば、後から状況を説明しやすくなります。
解決できない場合は、消費者ホットライン「188」から、地域の消費生活センターへ相談できます。
ヒカルの動画が多くの人に刺さった理由
ヒカルさんは、2017年にも祭りくじを買い占め、当たりの有無を確かめる動画で大きな注目を集めました。
今回のUFOキャッチャー企画も、その流れを思い出させる内容です。
誰もが一度は抱いたことのある、「本当に当たりは入っているのか」という疑問。
けれども、普通の人が何万円も使い、全てのくじを取って確かめることは簡単ではありません。
ヒカルさんは、その疑問を視聴者の代わりに最後まで追いかけました。
動画が支持されたのは、単に大金を使ったからではないでしょう。
泣き寝入りするしかなかった高校生や、疑問を抱えながら働いていたスタッフの代わりに、目の前の違和感へ踏み込んだからです。
疑うべきは人より、当たりが見えない仕組みだった
ヒカルさんのUFOキャッチャー動画について、やらせだったと断定できる証拠は確認されていません。
約7万円を使った検証では、5等12枚以外の上位賞が出ませんでした。
その後、コレコレさんも8万6,000円をかけて別の機械を調べ、特賞は出たものの、1等を確認できませんでした。
コレコレさんはヒカルさんを「多分ヤラセじゃない」と評価しましたが、それだけで全ての疑惑が解決したわけでもありません。
店舗側が意図的に当たりを抜いていたのか。
スタッフが動画のために仕込んだのか。
すでに当たりが出た後だったのか。
公開情報だけでは、最終的な真相まで確認できません。
それでも、はっきりしたことがあります。
当たりが入っているかを利用者が確かめられず、運営側の説明を信じるしかない仕組みは、疑われて当然だということです。
高額な景品が目の前にあっても、無理に追いかけなくていい。
遊び終わったあとに残るのが後悔ではなく、楽しかったという気持ちであることのほうが、ずっと大切です。
出典
- ヒカル(Hikaru)公式YouTubeチャンネル
- コレコレチャンネル KoreTube
- Real Sound Tech
- YouTubeニュース ユーチュラ
- 消費者庁
- 一般社団法人日本アミューズメント産業協会








