
料理ができないわけではない。
包丁は使えるし、レシピを見ればそれなりに作れる。家族から「おいしい」と言われたことだってある。
それなのに、夕方が近づくと気持ちが重くなる。
「今日は何を作ればいいんだろう」
冷蔵庫を開ける前から、もう疲れている。そんな自分を見て、「料理ができるのに嫌いだなんて、ただの甘えなのかな」と責めてしまう人もいるでしょう。
けれど、料理ができることと、毎日料理を楽しめることは別です。
嫌いな自分を無理に変えなくても、食事は回せます。必要なのは料理を好きになる努力ではなく、嫌いでも続けられる仕組みです。
気になる内容からチェック
料理はできるけど嫌いでも、直す必要はない
料理が嫌いだからといって、生活能力が低いわけでも、家族への愛情が足りないわけでもありません。
仕事にも、掃除にも、得意だけれど好きではないことがあります。料理も同じです。
むしろ料理ができる人ほど、周囲から期待されやすくなります。
「作れるんだから、今日もお願い」
「前に作ったあれ、おいしかったよね」
褒められているはずなのに、「これからも自分が担当しなければならない」と感じてしまう。できることが、そのまま役割として固定されてしまうからです。
料理を好きになる必要はありません。
目指したいのは、料理への情熱ではなく、食事の時間を無理なく迎えられる暮らしです。
料理が嫌いになるのは、調理だけが原因ではない
料理と聞くと、食材を切ったり炒めたりする場面を思い浮かべます。
実際には、その前後にいくつもの作業が隠れています。
- 家族の予定や好みを確認する
- 献立を決める
- 冷蔵庫の在庫を確認する
- 足りない食材を買う
- 食材を洗って切る
- 同時進行で調理する
- 盛り付ける
- 食卓を片付ける
- 食器や調理器具を洗う
- 残った食材を保存する
料理が20分で終わっても、その前に献立を考え、買い物をして、食後には片付けが待っています。
「料理が嫌い」と感じている人の中には、調理そのものではなく、この終わりの見えない一連の作業に疲れている人が少なくありません。
毎日違う献立を求められる
掃除や洗濯は、基本的に同じ手順を繰り返せます。
ところが料理には、「昨日とは違うものを作らなければ」という空気があります。
同じ料理を続ければ飽きられるかもしれない。栄養も考えたい。家族の好みも違う。予算も抑えたい。
一食を決めるだけなのに、いくつもの条件を同時に満たそうとすれば、考えるだけで疲れてしまいます。
料理をしても、すぐに次の食事が来る
時間をかけて作った料理も、食べ終わるのはあっという間です。
片付けが終わったと思ったら、数時間後にはまた次の食事を考える。料理には、仕事のような明確な区切りがありません。
昨日きちんと作ったからといって、今日が免除されるわけでもないのです。
「できる人」ほど手を抜きにくい
料理に慣れている人は、簡単な食事を出したときに「本当はもっと作れるのに」と感じやすくなります。
冷凍食品を使う。
惣菜を並べる。
丼だけで済ませる。
どれも食事として成立しているのに、自分の能力と比べて「手抜き」と判断してしまうのです。
料理が苦手な人より、できる人のほうが自分に高い基準を課している場合もあります。
料理の負担を増やす3つの思い込み
毎日手作りしなければならない
毎日食べる必要はあっても、毎日すべてを手作りする必要はありません。
炊いたご飯に惣菜を合わせても、冷凍うどんに卵を落としても、一食はきちんと成立します。
手作りかどうかより、空腹を満たし、無理なく次の日を迎えられることのほうが大切です。
品数が少ないと申し訳ない
主菜、副菜、汁物を毎回そろえようとすると、使う食材も洗い物も増えます。
丼や麺類、具だくさんのスープなら、一皿でも複数の食材を組み合わせられます。
品数の多さは、愛情の大きさではありません。
一皿しかない日があっても、その食卓が失敗になるわけではないのです。
同じ料理を出すのは手抜き
家族が嫌がっていないなら、同じ料理を何度出しても構いません。
カレー、焼き魚、丼、麺、鍋など、迷わず作れる料理は生活を支える大切な定番です。
レパートリーを増やすより、「困ったらこれ」という料理を増やしたほうが、毎日の負担は軽くなります。
毎日のご飯作りをラクにする7つの逃げ道
1.最初から「作らない日」を決めておく
限界になってから料理を休むと、「今日はサボってしまった」という罪悪感が残ります。
そこで、作らない日をあらかじめ予定に入れておきます。
- 水曜日は冷凍食品
- 金曜日は惣菜かテイクアウト
- 日曜日の昼は各自で用意する
最初から決まっていれば、作らないことは失敗ではなく予定です。
週7日作って苦しくなるより、週4日を無理なく続けられるほうが、暮らしは安定します。
2.曜日ごとに料理の種類だけ決める
一週間分の細かな献立を考えるのが苦手なら、料理名ではなく種類だけを決めます。
- 月曜日:丼
- 火曜日:魚
- 水曜日:作らない
- 木曜日:麺
- 金曜日:惣菜
- 土曜日:家族が食べたいもの
- 日曜日:鍋・カレー・残り物
「今夜は何にしよう」とゼロから考える必要がなくなります。
火曜日が魚の日なら、鮭、サバ、刺身の中から選ぶだけです。選択肢を減らすだけで、献立を決める負担はかなり変わります。
3.作るのは主菜だけにする
すべてを手作りしようとせず、自分が作る料理を一品だけに絞ります。
肉や魚を焼いたら、サラダは袋入りのもの、汁物は即席、漬物は市販品で構いません。
反対に、主菜を惣菜にして、みそ汁だけ作る日があってもいいでしょう。
「どこか一つだけ自分で用意したら十分」と決めると、手作りか外食かという極端な二択から抜け出せます。
4.何も考えられない日の食事を常備する
本当に疲れている日は、簡単なレシピを探すことさえ面倒です。
そんな日のために、「考えなくても出せる食事」を決めておきます。
- パックご飯、納豆、即席みそ汁
- 冷凍うどん、卵、冷凍ネギ
- 食パン、チーズ、スープ、果物
- 冷凍チャーハン、冷凍野菜
- サバ缶、ご飯、カットサラダ
- レトルトカレー、ゆで卵
- 惣菜の唐揚げ、袋入りサラダ、ご飯
非常食ではなく、気力を守るための「平日の避難食」です。
余裕がある日に買い足しておけば、疲れた自分を助けられます。
5.嫌いな工程だけを外に任せる
料理のどこが嫌なのかによって、選ぶサービスは変わります。
| 苦痛に感じること | 減らしやすい選択肢 |
|---|---|
| 献立を決めること | 曜日別の定番化、ミールキット |
| 買い物に行くこと | ネットスーパー、定期宅配 |
| 食材を切ること | カット野菜、冷凍野菜、下処理済み食材 |
| 調理すること | 惣菜、冷凍食品、宅配弁当 |
| 後片付け | ワンプレート、調理シート、食洗機 |
| すべての工程 | 外食、テイクアウト、宅配食 |
ミールキットは、献立や買い物が嫌いな人には便利です。
一方で、調理そのものや洗い物が嫌いな人には、完成した宅配弁当や惣菜のほうが合います。
人気のサービスを選ぶのではなく、自分が最も嫌いな工程を消してくれるものを選ぶことが大切です。
6.家族に「手伝い」ではなく担当を持ってもらう
一人が献立から片付けまで抱え、ほかの家族が気が向いたときだけ手伝う形では、負担の中心は変わりません。
「手伝ってほしい」ではなく、担当を分けます。
- 献立は家族が二択から選ぶ
- ご飯を炊くのは子どもの担当
- 食後の洗い物はパートナーの担当
- 週末の一食は各自で用意する
- 足りない食材は気づいた人が共有する
料理ができる人だけが、食事に関するすべての責任を持つ必要はありません。
家族への伝え方に迷ったら、責めるのではなく、今の状態と希望を具体的に伝えます。
料理ができないわけではないけれど、献立から片付けまで毎日一人で担当するのがしんどくなっています。これからは週に2日作らない日を設けて、食後の片付けも分担したいです。
「料理が嫌い」とだけ伝えるより、何が負担で、何を変えたいのかが伝わりやすくなります。
7.料理の合格点を70点まで下げる
毎日の食事に、特別な感動は必要ありません。
焦げていない。
お腹が満たされた。
大きな洗い物を残さずに済んだ。
それだけで十分な日もあります。
料理が嫌いな人に必要なのは、100点の食卓を作る技術ではなく、70点で「今日はこれで終わり」と言える力です。
足りない栄養が気になるなら、次の食事や翌日に野菜、果物、乳製品などを足せば構いません。一食ですべてを整えようとしないことも、長く続けるための工夫です。
お金だけでなく、時間と気力も食費に含めて考える
惣菜やミールキットは、自炊より高く感じることがあります。
ただし、自炊にも買い物、献立決め、調理、片付けの時間がかかっています。
数百円を節約するために疲れ切り、翌日の仕事や家族との時間まで苦しくなるなら、本当に得をしているとは言い切れません。
毎日利用するのが難しければ、最も忙しい曜日だけ使う。給料日の週だけ使う。冷凍庫に数食だけ置いておく。
全部を置き換えなくても、一週間の中に逃げ道が一つあるだけで気持ちは変わります。
市販の食品を選ぶときは、パッケージの栄養成分表示を見ながら、たんぱく質を含むおかずや野菜を一品足す程度で十分です。
完璧な自炊と、栄養を無視した食事の二択ではありません。その間には、現実的な選択肢がたくさんあります。
急に料理が嫌いになったときは、疲れのサインかもしれない
以前は普通に料理できていたのに、最近になって台所へ立つことが極端につらくなった。
料理だけでなく、入浴、片付け、仕事、人との会話などもおっくうになった。
眠れない、食欲がない、何をしても楽しくない状態が続いている。
そのようなときは、料理の工夫だけで乗り切ろうとせず、まず休むことを優先してください。
「怠けているだけ」と決めつける必要はありません。疲れが抜けない状態が続く場合は、家族や身近な人、かかりつけ医、専門の相談窓口へ話してみることも大切です。
料理ができない自分を責めるより、料理まで手が回らなくなっている自分の状態に目を向けてください。
料理を嫌いなままでも、暮らしはちゃんと回せる
料理を好きな人がいるように、料理を嫌いな人もいます。
作れるのに作りたくない日もある。家族を大切に思っていても、台所には立ちたくない日もある。
その気持ちは矛盾ではありません。
毎日手作りしなくてもいい。
同じ献立を繰り返してもいい。
惣菜や冷凍食品を使ってもいい。
家族に任せてもいい。
料理を好きになることより、料理のために自分を嫌いにならないことのほうが、ずっと大切です。
今日の食卓が簡単なものになっても、あなたの価値は何も減りません。
出典
- 厚生労働省「こころの耳」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット
- 消費者庁「早わかり食品表示ガイド」
- 農林水産省「食育白書」
- 株式会社LIXIL「キッチンとの距離感に関する意識調査」
- ナイル株式会社「料理に関する意識調査」









