
名古屋で楽しみにしていたひつまぶしが運ばれてきた瞬間、うれしさと同時に少しだけ手が止まることがあります。
「最初から出汁をかけていいのかな」
「薬味は全部入れるの?」
「3回に分けるのか、4回に分けるのか分からない」
せっかくのごちそうなのに、食べ方が気になって落ち着かないのはもったいないですよね。
ひつまぶしは、難しい作法を覚えてから食べる料理ではありません。お櫃の中を4等分し、少しずつ味を変えていけば、うなぎのおいしさを最後まで飽きずに楽しめます。
気になる内容からチェック
ひつまぶしの食べ方は「4等分して4回」が基本
ひつまぶしが運ばれてきたら、まずはしゃもじをお櫃の底まで入れ、十字を切るように4等分します。
食べる順番は、次の4回です。
- そのまま食べる
- 薬味を添えて食べる
- 薬味と出汁をかけて食べる
- 一番気に入った食べ方でもう一度味わう
「ひつまぶしは3通りの食べ方」と説明されることもありますが、味の種類が3通りという意味です。
お櫃の中は4等分し、最後の4杯目を好きな味で締めるのが一般的な楽しみ方です。
きっちり同じ量に分けられなくても問題ありません。最後まで食べ切れる量を考えながら、大まかに分ければ十分です。
1杯目は何も足さず、うなぎとタレをそのまま味わう
最初の4分の1を茶碗によそったら、まずは薬味や出汁を加えず、そのまま食べます。
焼きたてのうなぎの香り、皮の食感、身のやわらかさ、甘辛いタレとご飯のバランスを最も感じやすい一杯です。
山椒が添えられていても、最初のひと口は何もかけずに食べてみてください。そこから少量の山椒を加えると、味の変化も分かりやすくなります。
最初から出汁をかけてしまうと、うなぎの香ばしさやタレの濃さが分かりにくくなります。出汁茶漬けを楽しみにしていても、まず数口だけはそのまま味わっておくと、後の変化がより鮮明になります。
2杯目は薬味を少しずつ加える
次の4分の1には、ねぎ、刻みのり、わさびなどの薬味を添えます。
うなぎの脂と甘いタレに、ねぎやわさびの爽やかさが加わり、1杯目よりも軽やかな味になります。
薬味は最初から全部入れなくていい
薬味の量に決まりはありません。
ただし、わさびやねぎを最初から大量に入れると、うなぎの風味より薬味の刺激が強くなってしまいます。
最初は少量をのせ、途中で足していく方が、自分の好きなバランスを見つけやすくなります。
わさびは醤油に溶かすのではなく、うなぎの上に少しずつのせて食べると、香りと辛味を感じやすくなります。
3杯目は薬味を添え、出汁茶漬けにする
3杯目は、ご飯とうなぎに薬味をのせ、その上から温かい出汁をかけます。
濃厚だったタレの味が出汁によってやわらぎ、さらさらと食べられる一杯に変わります。お腹が少し満たされてきた頃でも、出汁茶漬けなら箸が進みやすくなります。
出汁は一度に注ぎすぎない
出汁は、ご飯が完全に沈むほど入れなくても大丈夫です。
最初は茶碗の半分ほどまで注ぎ、足りなければ後から加えます。一度にたくさん注ぐと、タレやうなぎの味が薄くなり、戻すことができません。
出汁つぼが熱い場合もあるため、蓋や取っ手に触れるときは注意してください。
お茶ではなく、添えられた出汁を使う
「お茶漬け」という名前から、お茶をかけると思う人もいるかもしれません。
専門店では、昆布やかつおなどから取った出汁が添えられていることが多いため、基本的には店が用意した出汁を使います。
出汁が付いていない場合は、無理にお茶漬けにする必要はありません。提供方法は店によって異なるため、分からなければ店員さんに聞いても失礼にはあたりません。
4杯目は一番好きだった食べ方で締める
最後の4分の1は、そのまま、薬味、出汁茶漬けの中から、一番おいしいと感じた食べ方を選びます。
香ばしいうなぎをもう一度しっかり味わいたいなら、そのまま。
脂を軽くしながら食べたいなら、ねぎやわさびを添えて。
温かい出汁で穏やかに締めたいなら、出汁茶漬け。
最後の一杯に決まった正解はありません。自分の舌で選べることこそ、ひつまぶしの楽しさです。
食べる順番を間違えてもマナー違反にはならない
ひつまぶしの4段階の食べ方は、おいしさの変化を楽しむために広まったものです。
必ずその順番で食べなければならない、厳格な作法ではありません。
最初から薬味をのせても、出汁茶漬けを多めに楽しんでも、それだけでマナー違反になるわけではありません。
ただ、初めて食べるときは基本の順番を一度試してみると、同じうなぎが薬味や出汁によって変化していく面白さを感じられます。
お櫃の中を最初から全部混ぜてもいい?
うなぎ、ご飯、タレをなじませるために軽く混ぜることはありますが、最初からお櫃全体に薬味や出汁を入れるのは避けた方がよいでしょう。
一度混ぜてしまうと、そのままの味や薬味だけの味に戻せなくなるからです。
茶碗に取り分けてから、食べる分だけ味を変えるのが失敗しにくい食べ方です。
しゃもじでうなぎを切っても大丈夫?
4等分するときに、しゃもじがうなぎに当たって崩れてしまっても問題ありません。
ひつまぶしのうなぎは、もともと食べやすい大きさに刻まれています。見た目を崩さないことよりも、ご飯とうなぎを一緒に取り分けることを意識してみてください。
ひつまぶしとうな重・うな丼の違い
ひつまぶし、うな重、うな丼には、いずれもうなぎの蒲焼とご飯が使われます。
大きな違いは、盛り付け方と食べ方です。
| 料理 | 盛り付け | うなぎの形 | 基本的な食べ方 |
|---|---|---|---|
| ひつまぶし | お櫃 | 細かく刻まれていることが多い | そのまま、薬味、出汁で味を変える |
| うな重 | 重箱 | 大きな蒲焼をのせることが多い | 蒲焼とご飯を一緒に味わう |
| うな丼 | 丼 | 蒲焼をのせる | 丼ものとして気軽に味わう |
うな重とうな丼は、器だけでなく、うなぎの量や付け合わせ、価格が異なる場合もあります。ただし、内容は店によって変わるため、「うな重の方が必ず高級」「うな丼は必ずうなぎが少ない」とは限りません。
焼き方は料理名だけでは決まらない
名古屋のひつまぶしには、うなぎを蒸さずに直接焼き上げる「地焼き」が多く見られます。
皮が香ばしく、身の食感を感じやすいのが特徴です。
一方、関東では一度蒸してから焼き、ふっくらと仕上げる方法が広く知られています。
ただし、すべてのひつまぶしが地焼きで、すべてのうな重が蒸して焼かれているわけではありません。ひつまぶしでも関東式の焼き方を選べる店があり、うな重を地焼きで提供する店もあります。
焼き方は料理名ではなく、地域や店の方針によって変わります。
ひつまぶしの名前の由来と発祥
「ひつまぶし」という名前は、お櫃に入れたご飯とうなぎを「まぶす」ことから生まれたという説があります。
発祥については複数の説があり、ひとつに断定することはできません。
名古屋の老舗「あつた蓬莱軒」では、明治末期頃、大きなお櫃にうなぎの蒲焼とご飯を盛り、取り分けて提供していたことが始まりとされています。
同店は「ひつまぶし」を登録商標として掲げ、薬味やお茶漬けで味を変える楽しみ方も明治時代に確立されたと説明しています。
現在では特定の店だけでなく、名古屋を代表する郷土料理、いわゆる「なごやめし」のひとつとして全国で親しまれています。
家でひつまぶしを楽しむときに用意したいもの
市販のうなぎの蒲焼があれば、家庭でもひつまぶしらしい食べ方を楽しめます。
用意したいものは次のとおりです。
- うなぎの蒲焼
- 温かいご飯
- 蒲焼のタレ
- 刻みねぎ
- 刻みのり
- わさび
- 和風出汁
- 好みで山椒
うなぎを食べやすい幅に切り、ご飯の上に並べてタレをかけます。大きなお櫃がなくても、深めの器や丼で問題ありません。
家族で食べる場合は、大皿から取り分けるより、一人分ずつ器を用意すると、薬味や出汁の量を自分で調整しやすくなります。
蒲焼の温め方は商品によって異なるため、パッケージに記載された方法を優先してください。
ひつまぶしに副菜は必要?
ひつまぶしは、ご飯とうなぎだけでも十分に満足感のある料理です。無理に品数を増やす必要はありません。
もう一品添えるなら、うなぎの濃厚な味を邪魔しにくいものが合います。
- お吸い物や肝吸い
- 漬物
- ほうれん草のおひたし
- 冷ややっこ
- だし巻き卵
- きゅうりや大根の酢の物
脂の多い肉料理や濃い味付けのおかずを重ねるより、口の中を整えてくれる汁物や野菜料理を選ぶと、最後の一杯までうなぎを楽しみやすくなります。
最後の一膳は、誰かの正解ではなく自分の好きで
ひつまぶしを前にして迷ったら、まずはお櫃の中を4等分してみてください。
そのまま食べて、薬味を添えて、出汁をかける。
同じうなぎとご飯なのに、一杯ごとに表情が変わっていきます。
基本の順番は、おいしさを縛るためのルールではありません。自分が一番好きな味を見つけるための道しるべです。
最後の一杯をどの食べ方で締めるか。その小さな迷いまで楽しめたなら、ひつまぶしの魅力を十分に味わえています。
出典
- あつた蓬莱軒 公式サイト
- 名古屋市公式観光情報「名古屋コンシェルジュ」
- JR東海「旅のコンテンツポータル」
- ひつまぶし備長 公式サイト
- キッコーマン ホームクッキング









