
若い頃と体重はそれほど変わらないのに、スカートやパンツのウエストだけがきつくなった。
食べる量を減らしても、お腹まわりが以前のようには戻らない。
そんな変化を感じると、「内臓脂肪が増えたのでは」と心配になるかもしれません。
内臓脂肪は、お腹の奥にある内臓の周囲につく脂肪です。皮膚のすぐ下につく皮下脂肪とは場所が異なり、鏡を見たり、お腹をつまんだりするだけでは正確に判断できません。
女性の場合、若い時期は皮下脂肪がつきやすい傾向がありますが、年齢や閉経前後の体の変化によって、内臓脂肪が増えやすくなることがあります。
ただし、「お腹が出ているから内臓脂肪が多い」「腹囲が90cm未満だから問題ない」と、見た目や一つの数字だけで決めつけることはできません。
女性の内臓脂肪はなぜ増えるのか。腹囲90cmにはどのような意味があり、減らすためには何から始めればよいのかを、順番に見ていきます。
気になる内容からチェック
内臓脂肪と皮下脂肪はつく場所が違う
体脂肪は、大きく内臓脂肪と皮下脂肪に分けられます。
| 比較項目 | 内臓脂肪 | 皮下脂肪 |
|---|---|---|
| つく場所 | 胃や腸など内臓の周囲 | 皮膚のすぐ下 |
| 外からつまめるか | 基本的につまめない | つまみやすい |
| つきやすい場所 | お腹まわり | 下腹、腰、お尻、太もも、二の腕 |
| 体型の呼び方 | リンゴ型と呼ばれることがある | 洋ナシ型と呼ばれることがある |
| 健康への影響 | 血糖、血圧、脂質との関係が深い | 内臓脂肪より影響は小さい傾向 |
| 減量したとき | 比較的変化が表れやすい | 内臓脂肪より減りにくい傾向 |
お腹をつまんだときに厚くつかめる脂肪は、主に皮下脂肪です。
一方、内臓脂肪は腹筋より内側にあるため、手で直接つまむことはできません。お腹全体が前に張り出して見えることはありますが、体型だけで内臓脂肪の量を確定することはできません。
内臓脂肪と皮下脂肪の両方が増えている人もいます。
「つまめるから皮下脂肪だけ」「硬いお腹だから内臓脂肪」と自己判断せず、腹囲、BMI、血圧、血糖、血液検査の結果を合わせて考えることが大切です。
女性の腹囲90cmは何を意味する?
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、おへその高さで測った腹囲が、男性85cm以上、女性90cm以上の場合に、内臓脂肪の蓄積が疑われます。
この腹囲は、男女とも内臓脂肪面積が100cm²以上になる目安として設定されています。
ただし、女性の腹囲が90cm以上というだけで、直ちにメタボリックシンドロームと診断されるわけではありません。
腹囲の基準に加えて、次の3項目のうち2項目以上に該当した場合が、メタボリックシンドロームの診断基準です。
- 血圧が基準以上
- 空腹時血糖値が基準以上
- 中性脂肪が基準以上、またはHDLコレステロールが基準未満
すでに高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療を受けている場合は、それぞれの項目に含まれます。
腹囲90cmは「病気が確定する境界線」ではなく、血圧や血液検査を含めて詳しく確認するきっかけとなる数字です。
反対に、腹囲が90cm未満なら、内臓脂肪や生活習慣病の心配が一切ないという意味でもありません。
健診で血糖、血圧、中性脂肪、コレステロールなどを指摘された場合は、腹囲が基準未満でも結果を放置しないようにしましょう。
腹囲は洋服のウエスト位置ではなく、おへその高さで測る
健康診断で測る腹囲は、洋服やスカートのウエストサイズとは異なります。
測る場所は、基本的におへその高さです。
正しく測るためには、次の手順を意識します。
- 空腹時に測る
- 両足をそろえて自然に立つ
- 腕を体の横に下ろす
- おへその高さにメジャーを水平に巻く
- お腹を無理にへこませない
- 軽く息を吐き終えたところで測る
- メジャーを皮膚に食い込ませない
毎回違う時間や場所で測ると、食事や姿勢、呼吸によって数字が変わります。
変化を記録する場合は、朝食前など、できるだけ同じ条件で測りましょう。
BMIが正常でも内臓脂肪が多いことはある?
BMIは、体重と身長から肥満度を確認する指標です。
計算式は次のとおりです。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
日本ではBMI25以上が「肥満」と判定されます。
一方、健康のために目標とするBMIの範囲は、年齢によって異なります。
| 年齢 | 目標とするBMIの範囲 |
|---|---|
| 18~49歳 | 18.5~24.9 |
| 50~64歳 | 20.0~24.9 |
| 65歳以上 | 21.5~24.9 |
BMI22は、身長から標準体重を計算するときに用いられる数値です。「BMI22未満は標準ではない」という意味ではありません。
また、BMIだけでは脂肪がついている場所や、筋肉量までは分かりません。
BMIが25未満でも、内臓脂肪が蓄積していたり、血圧や血糖、中性脂肪が高くなったりすることがあります。
反対に、筋肉量が多い人はBMIが高くても、体脂肪が多いとは限りません。
BMI、腹囲、健診結果のどれか一つだけで判断しないことが重要です。
女性の内臓脂肪が増える主な理由
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っている
内臓脂肪が増える基本的な原因は、食事や飲み物から摂取するエネルギーが、生活や運動で消費するエネルギーを上回る状態が続くことです。
一度に食べる量が多くなくても、次のような習慣が重なると、摂取エネルギーが増えやすくなります。
- 甘い飲み物を日常的に飲む
- 菓子やパンを食事とは別に食べる
- アルコールと一緒に高カロリーなおつまみを食べる
- 外食や総菜が多く、脂質の量を把握しにくい
- 空腹でないのに習慣で食べる
- 夜遅くに一日の不足分をまとめて食べる
炭水化物や脂質のどちらか一つだけが原因になるわけではありません。
特定の栄養素を完全に抜くよりも、自分が何を、いつ、どのくらい食べているかを把握する方が、改善点を見つけやすくなります。
年齢とともに活動量や筋肉量が減っている
年齢を重ねると、仕事や家庭環境の変化によって、歩く時間や外出する機会が減ることがあります。
さらに、筋肉量も少しずつ低下するため、若い頃と同じ食事量でも体重や腹囲が増えやすくなる場合があります。
「代謝が落ちたから何をしても痩せない」と考える必要はありませんが、以前より動く量が減っていないかを振り返ることは大切です。
運動の時間を新たに確保するだけでなく、階段を使う、買い物に歩いて行く、座っている時間を減らすといった生活活動も積み重なります。
閉経前後に脂肪のつき方が変化する
女性は閉経前後になると、女性ホルモンの変化や加齢の影響を受け、脂肪が腹部に集まりやすくなることがあります。
以前はお尻や太ももなどにつきやすかった脂肪が、お腹まわりに目立つようになったと感じる人もいます。
ただし、更年期だから必ず太るわけではありません。
ホルモンの変化だけでなく、筋肉量、睡眠、食事、活動量など、複数の要因が重なっています。
急激な体重増加、強い疲労感、動悸、むくみ、月経の異常などがある場合は、すべてを更年期のせいにせず、医療機関へ相談しましょう。
睡眠不足や不規則な生活が続いている
睡眠が不足すると、疲れて体を動かす機会が減ったり、甘いものや脂っこいものを選びやすくなったりします。
夜更かしによって食事の回数が増えれば、一日の摂取エネルギーも増えやすくなります。
睡眠時間だけでなく、就寝時刻と起床時刻が大きく乱れていないか、寝る直前まで食べたり飲んだりしていないかも確認したいところです。
内臓脂肪が増えると何が問題になる?
内臓脂肪は、単にお腹の見た目を変えるだけではありません。
過剰に蓄積すると、次のような異常と関係しやすくなります。
- 血圧の上昇
- 空腹時血糖値の上昇
- 中性脂肪の増加
- HDLコレステロールの低下
- 2型糖尿病
- 脂質異常症
- 脂肪肝
- 動脈硬化
- 心臓病や脳卒中
特に注意したいのは、複数の異常が一人に重なることです。
血圧、血糖、脂質の数値が少し高い程度でも、それぞれが重なると心臓病や脳卒中のリスクが高くなります。
自覚症状がないから大丈夫とは限りません。
内臓脂肪が気になる人は、体重と腹囲だけでなく、健康診断の数値も確認しましょう。
女性の内臓脂肪を減らすために最初にすること
1週間だけ食事と飲み物を記録する
最初から厳しい食事制限を始める必要はありません。
まずは1週間、次の内容を記録してみましょう。
- 食事をした時間
- 食べた料理や食品
- 飲んだもの
- 間食
- アルコール
- 空腹だったか
- 食べたときの気分
記録すると、「夕方に菓子を食べることが多い」「飲み物から糖分を取っている」「休日だけ食事量が増えている」など、自分では気づかなかった習慣が見えてきます。
すべてを一度に変えるのではなく、改善しやすいものを一つ選びます。
主食を完全に抜くより、食事全体を整える
内臓脂肪を減らすために、ごはんやパン、麺をすべてやめる必要はありません。
主食を極端に減らすと、空腹が強くなり、菓子や脂質の多い料理を食べすぎることがあります。
毎回の食事では、次の組み合わせを意識します。
- ごはん、パン、麺などの主食
- 魚、肉、卵、大豆製品などの主菜
- 野菜、きのこ、海藻などの副菜
量を減らす場合も、特定の食品だけを禁止するのではなく、揚げ物の回数、菓子、甘い飲み物、アルコールなど、余分になりやすい部分から見直すと続けやすくなります。
たんぱく質も不足させない
食事量を減らすときに、肉や魚まで大きく減らしてしまうと、筋肉の維持に必要なたんぱく質が不足しやすくなります。
魚、脂身の少ない肉、卵、豆腐、納豆、乳製品などを、体調や食事量に合わせて取り入れましょう。
ただし、たんぱく質を取れば取るほど痩せるわけではありません。
調理に使う油や、肉の脂身、加工肉の量にも注意が必要です。
腎臓病などで食事指導を受けている人は、自己判断でたんぱく質を増やさず、医師や管理栄養士に相談してください。
甘い飲み物とアルコールを見直す
飲み物は満腹感を得にくく、摂取量に気づきにくい部分です。
砂糖入りのコーヒー、清涼飲料水、乳酸菌飲料、加糖の紅茶やカフェ飲料などを頻繁に飲んでいる場合は、水や無糖のお茶へ置き換えるだけでも違いが生まれます。
アルコールは飲酒量だけでなく、一緒に食べる料理や、飲酒後の締めの食事によって摂取エネルギーが増えることがあります。
毎日飲んでいる人は、飲まない日を設けることから始めてもよいでしょう。
運動は腹筋だけでなく、全身を動かす
お腹の脂肪を減らすために腹筋運動だけを続けても、お腹の脂肪だけを選んで落とすことはできません。
腹筋運動は、姿勢を保つ筋肉を鍛えるためには役立ちます。しかし、内臓脂肪を減らすには、食事の見直しと全身を使う身体活動を組み合わせることが基本です。
成人の身体活動の目安として、次の内容が示されています。
- 歩行と同程度以上の身体活動を1日60分以上
- 1日約8,000歩以上
- 息が弾み、汗をかく程度の運動を週60分以上
- 筋力トレーニングを週2~3日
- 座りっぱなしの時間を長くしすぎない
1日60分は、連続して行う必要はありません。
通勤、買い物、家事、階段の利用、昼休みの散歩などを合計した時間です。
現在ほとんど体を動かしていない人が、初日から8,000歩を目指す必要もありません。
まずは次のような小さな変更から始めます。
- 今より1日10分多く歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 30~60分ごとに立ち上がる
- 買い物では店の入口から少し離れた場所に駐車する
- テレビを見ながらスクワットやかかと上げをする
- 週2回、無理のない筋力トレーニングを行う
胸の痛み、強い息切れ、めまい、動悸がある人や、心臓・血管、関節の病気がある人は、運動を始める前に医師へ相談してください。
体重はどのくらい減らせばいい?
BMI25以上で、肥満に関連する健康上の問題がある「肥満症」では、最初から標準体重まで減らすことだけを目標にする必要はありません。
医学的な減量目標としては、3~6か月で現在の体重の3%以上が一つの目安とされています。
例えば、体重70kgの人なら、3%は2.1kgです。
70kgから一気に50kg台を目指すのではなく、まず67.9kg前後を目標にする考え方です。
わずかに見える減量でも、血糖、血圧、脂質などの改善が期待できます。
ただし、これはすべての人に減量が必要という意味ではありません。
BMIが低い人、高齢者、妊娠中や授乳中の人、持病がある人は、自己流の減量が健康を損なうことがあります。
内臓脂肪レベルを測る体組成計は信用できる?
家庭用の体組成計に表示される「内臓脂肪レベル」は、メーカー独自の方法で推定した数値です。
体の変化を同じ機器で継続して確認する目安にはなりますが、病院のCT検査で測る内臓脂肪面積と同じものではありません。
機器が変われば、同じ人でも数値が変わる可能性があります。
測る場合は、次の条件をそろえましょう。
- 同じ体組成計を使う
- 同じ時間帯に測る
- 食事や入浴、運動の直後を避ける
- 一日の増減ではなく、数週間の傾向を見る
体組成計の数値だけで病気を判断したり、必要以上に不安になったりしないことが大切です。
医療機関へ相談した方がよい目安
次のような場合は、自己流のダイエットを続ける前に、内科やかかりつけ医へ相談しましょう。
- 健診で血圧、血糖、脂質、肝機能を指摘された
- 女性で腹囲が90cm以上ある
- BMIが25以上で体調上の問題がある
- 短期間で急に体重が増えた
- 強いむくみや息切れがある
- いびきや日中の強い眠気がある
- 月経の乱れや更年期症状が強い
- 食事を制限しても体重が大きく変化する
- 薬を飲み始めてから体重が増えた
- 食事制限や過食を自分で止められない
月経や更年期に関する症状がある場合は、婦人科も相談先になります。
医療機関では、腹囲やBMIだけでなく、血液検査、血圧、既往歴、服用している薬などを確認し、必要に応じて治療や栄養指導を行います。
90cmという数字だけで、自分の体を決めつけない
女性の腹囲90cmは、内臓脂肪の蓄積を疑い、血圧や血液検査の結果を詳しく確認するための目安です。
90cmを超えたら直ちに病気、下回っていれば必ず安全、という数字ではありません。
大切なのは、体重、腹囲、血圧、血糖、脂質などの変化を一緒に見ることです。
内臓脂肪を減らすために、特別な食品や激しい運動から始める必要もありません。
食事や飲み物を記録する。今より10分多く歩く。座る時間を減らす。週に数回、筋肉を動かす。
小さく見える習慣でも、無理なく続けることで体は少しずつ変わります。
焦って短期間で体重を落とすより、半年後にも続けられる方法を選ぶことが、内臓脂肪を減らすための現実的な一歩です。
出典
- 厚生労働省「メタボリックシンドロームの診断基準」
- 厚生労働省「肥満・メタボリックシンドローム予防の食事」
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』
- 日本肥満学会「肥満の判定と肥満症の診断基準」
- Lovejoy JCほか「閉経移行期女性における内臓脂肪とエネルギー消費の変化」2008年
- Samargandy Sほか「閉経移行期における腹部内臓脂肪の変化」2021年