
球場に不思議な音楽が流れると、きつねの耳をつけたファイターズガールが笑顔で踊り始める。
一度見ただけなのに、気づけば手できつねの形を作りたくなる。そんな「きつねダンス」を生み出したのは、いったい誰なのでしょうか。
結論からいうと、発案者は元ファイターズガールで、誕生当時は球団職員として働いていた尾暮沙織(おぐれ・さおり)さんです。
尾暮さんは楽曲を選んだだけではありません。原曲のミュージックビデオにある動きを生かしながら、球場の観客が座ったまま一緒に踊れる振り付けへとアレンジしました。
つまり、きつねダンスは偶然生まれたブームではありません。
一曲との出会いを約2年間忘れずに温め続けた、一人の球団職員のひらめきから始まっています。
きつねダンスの生みの親は尾暮沙織さん
きつねダンスの発案者として知られている尾暮沙織さんは、かつて自分自身もファイターズガールとしてグラウンドに立っていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 尾暮沙織 |
| 読み方 | おぐれ・さおり |
| ファイターズガール在籍 | 2008年~2013年 |
| 誕生当時の立場 | 球団職員 |
| 主な担当 | ファイターズガールやマスコットを含むエンターテインメント運営 |
| きつねダンスでの役割 | 企画の発案、楽曲選定、球場向け振り付けのアレンジ |
ファイターズガールを引退した後、尾暮さんは球団職員へと転身しました。
表舞台を離れてからもファイターズガールのスケジュールやシフトを管理し、マスコットを含めたエンターテインメントチームの運営に携わっていました。
観客を楽しませる側と、パフォーマーを支える側。
その両方を経験していたからこそ、「踊る人だけが完成させるダンス」ではなく、「スタンドの観客も参加できるダンス」という発想につながったのでしょう。
きつねダンスの振り付けを考えたのは誰?
きつねダンスの振り付けについては、情報が混同されやすいため注意が必要です。
球場用に振り付けをアレンジした中心人物も尾暮沙織さん
きつねダンスは、すべての動きをゼロから作った完全なオリジナルダンスではありません。
原曲であるYlvisの「The Fox」のミュージックビデオには、もともときつねの耳や手足を表現する特徴的な動きが登場します。
尾暮さんは、その世界観や印象的な動きを残しながら、球場で踊りやすい形へアレンジしました。
特に大切にしたのが、観客が座ったままでも楽しめることです。
球場のスタンドでは、ファイターズガールのように大きくステップを踏むことはできません。そのため、腕や手、上半身の動きだけでもきつねらしさを表現できる振り付けに整えられました。
かわいらしく見せるためだけではなく、スタンドにいる人を置き去りにしないための工夫だったのです。
松田佳月さんはファイターズガール全体の振付担当
きつねダンスの振付師として、松田佳月さんの名前を目にすることがあります。
松田さんが2020年からファイターズガールの振付担当を務めていることは、北海道日本ハムファイターズの公式情報で確認できます。
ただし、松田さんがきつねダンス個別の振り付けを担当したと明記した公式情報は確認できません。
現時点で確認できる情報を整理すると、次のように考えるのが正確です。
- きつねダンスの企画を発案した人:尾暮沙織さん
- 楽曲「The Fox」を選んだ人:尾暮沙織さん
- 球場向けの振り付けをアレンジした中心人物:尾暮沙織さん
- ファイターズガール全体の振付担当:松田佳月さん
松田さんが制作過程にまったく関わっていなかったとまでは断定できません。
しかし、「きつねダンスの振付師は松田佳月さん」とだけ紹介してしまうと、尾暮さん本人が語っている振り付けアレンジの事実が抜け落ちてしまいます。
原曲はYlvisの「The Fox」
きつねダンスに使われている曲は、ノルウェー出身の兄弟ユニット・Ylvis(イルヴィス)が歌う「The Fox」です。
2013年に発表された楽曲で、正式なタイトルは「The Fox(What Does the Fox Say?)」。
犬や猫などの鳴き声は誰もが知っているのに、きつねの鳴き声はよく分からない。そんな素朴で少しおかしな疑問を、壮大なダンスミュージックに仕上げています。
真剣なのか、ふざけているのか分からない。
その絶妙な世界観と、一度聴いたら頭から離れないメロディーが、きつねダンスの中毒性につながりました。
北海道日本ハムファイターズには、キタキツネをモチーフにしたマスコット「フレップ・ザ・フォックス」がいます。
「The Fox」という楽曲と、きつねのマスコット。
この二つを結びつけたのが尾暮さんでした。
一曲との出会いから約2年、すぐには企画にしなかった
尾暮さんが「The Fox」と出会ったのは、きつねダンスが始まる約2年前です。
ファイターズガールと球団マスコットを一体で運営するエンターテインメントチームが作られ、尾暮さんはフレップの展開にも携わるようになりました。
フレップを生かせる楽曲を探していたときに見つけたのが「The Fox」です。
すぐに企画として採用されたわけではありません。
「いつか使えるかもしれない」
そう感じた尾暮さんは、曲の存在を自分の中に残し続けました。
そして2022年、球団ロゴやユニホーム、球場での演出が大きく変わるタイミングが訪れます。
新しいファイターズを見せるなら、今しかない。
約2年間温めてきたアイデアを提案し、きつねダンスが誕生しました。
流行を追いかけて急いで作った企画ではなく、使うべき瞬間が来るまで待ち続けた企画だったのです。
最初から大人気だったわけではない
今ではファイターズを代表するパフォーマンスになったきつねダンスですが、披露された直後から大反響が起きたわけではありません。
耳慣れない音楽に、独特な鳴き声。
これまでのプロ野球の応援とは少し違う雰囲気に、最初はどう反応すればよいのか戸惑った観客もいました。
それでも、ファイターズガールは踊り続けました。
やがてファイターズの選手たちが踊る動画が公開され、対戦相手の選手や著名人もまねするようになります。
選手が少し照れながら踊る姿や、全力でふざける姿がSNSで拡散されると、きつねダンスは野球を知らない人の画面にも届き始めました。
完成された広告ではなく、誰かが楽しそうにまねしている動画だったからこそ、「自分も踊ってみたい」という気持ちが連鎖したのでしょう。
きつねダンスが全国に広がった4つの理由
1.座ったままでもまねできた
きつねダンスは、大きなスペースを必要としません。
手できつねの形を作ったり、耳を表現したり、腕を動かしたりするだけでも参加できます。
ダンス経験がなくても、完璧に覚えていなくても大丈夫。
上手に踊ることより、一緒に動くことを楽しめる振り付けでした。
2.音楽に強烈な中毒性があった
「The Fox」には、言葉の意味が分からなくても耳に残る鳴き声とリズムがあります。
次に何が起こるのか分からない展開も、動画を最後まで見たくなる理由の一つです。
数秒間だけ流れるSNS動画でも、曲を覚えてもらえる強さがありました。
3.きつねの耳としっぽで一目で伝わった
きつねの耳としっぽをつけたファイターズガールの姿は、音を出さずに動画を見ても内容が伝わります。
誰が見ても「きつねのダンス」だと分かるため、テレビやニュース、SNSの短い映像とも相性が良かったのです。
4.選手や観客を主役にできた
きつねダンスでは、ファイターズガールだけが注目されるわけではありません。
ベンチで踊る選手、スタンドでまねする子ども、少し恥ずかしそうに手を動かす大人まで、誰もが映像の主役になれました。
北海道日本ハムファイターズ公式YouTubeとパーソル パ・リーグTVに投稿された関連動画は、2022年11月時点で累計7,000万回再生を超えています。
同年にはユーキャン新語・流行語大賞のトップテンにも選ばれ、球場のイニング間演出が社会現象へと変わりました。
きつねダンスは2026年も踊られている
きつねダンスは、2022年だけのブームで終わっていません。
本拠地が札幌ドームからエスコンフィールドHOKKAIDOへ移った後も披露され、2026年の球団公式イベントでも、ゲストと一緒に踊るイニング間パフォーマンスとして予定されています。
新しいダンスや演出が次々と登場する中でも、きつねダンスは残り続けています。
流行したから無理に続けているのではなく、初めて球場を訪れた人でも参加できる、ファイターズらしい文化になったからでしょう。
開催日や当日の演出は変更される場合があるため、観戦前には北海道日本ハムファイターズ公式サイトのイベント情報を確認してください。
一人の「いつか」が、球場全体を踊らせた
きつねダンスの生みの親は、元ファイターズガールの尾暮沙織さんです。
尾暮さんは「The Fox」と出会った後、すぐに結果を求めませんでした。
いつか使えるかもしれないと約2年間温め、球団が大きく変わる瞬間に企画を提案しました。
さらに、原曲の振り付けをそのまま見せるのではなく、観客が座ったまま一緒に楽しめる形へと整えています。
きつねダンスが多くの人に愛された理由は、かわいさや音楽の面白さだけではありません。
見る人と踊る人の間にあった壁をなくし、球場にいる全員を仲間にしたからです。
誰にも注目されていなかった一曲を忘れずにいたこと。
すぐに評価されなくても、ファイターズガールが踊り続けたこと。
その小さな積み重ねが、やがて日本中の手をきつねの形に変えました。
出典
- 北海道日本ハムファイターズ
- WANI BOOKS Newsクランチ!
- パ・リーグ.com/パ・リーグ インサイト
- Warner Music Japan
- 日刊スポーツ









