
リモートワークを始めてから、肩が重い。夕方になると腰が痛い。首を回すと違和感がある。
そんな不調が続くと、「自宅の椅子が安いから」「運動不足だから仕方ない」と考えてしまいがちです。
しかし、リモートワーク中の肩こりや腰痛は、椅子だけで決まるものではありません。
画面の高さ、キーボードの位置、休憩の取り方、座っている時間、仕事と休息の切り替えなど、いくつもの要因が重なって起こります。
高価なオフィスチェアを買う前に、まずは今の働き方と作業環境を見直してみましょう。
気になる内容からチェック
リモートワークの肩こり・腰痛は椅子だけが原因ではない
リモートワークでは、通勤や社内での移動がなくなり、気づかないうちに体を動かす時間が減ります。
自宅では会議室への移動も、同僚の席まで歩くこともありません。仕事に集中すると、数時間ほとんど同じ姿勢で座り続けることもあります。
さらに、ノートパソコンを机やダイニングテーブルに直接置くと、画面を見るために顔が下を向きやすくなります。
頭が前に出た姿勢や、背中を丸めた姿勢が続けば、首、肩、背中、腰の筋肉に負担がかかります。
「姿勢を正しくしよう」と背筋を伸ばし続けるだけでは十分ではありません。同じ姿勢を長時間続けないことの方が大切です。
肩こり・腰痛につながる5つの習慣
1.ノートパソコンを低い位置で見続けている
ノートパソコンは、画面とキーボードが一体になっています。
画面を見やすい高さまで上げると手が届きにくくなり、文字を打ちやすい位置に置くと画面が低くなるという弱点があります。
低い画面を長時間見続けると、首が前に出て背中が丸まりやすくなります。
長時間作業する場合は、パソコンスタンドや台を使って画面を上げ、外付けのキーボードとマウスを使用すると姿勢を調整しやすくなります。
専用スタンドがなくても、安定した本や箱を台として使うことは可能です。ただし、落下や排熱を妨げないよう注意してください。

2.足が床についていない
椅子を机の高さに合わせると、足が床から浮いてしまうことがあります。
足が安定しない状態では、太ももの裏側に圧力がかかったり、腰が前にずれたりしやすくなります。
椅子には深く腰掛け、背中を背もたれに預け、足裏全体が床につく高さに調整しましょう。
机に合わせると足が届かない場合は、フットレストや安定した足台を置きます。
雑誌や箱を使う場合は、滑ったり潰れたりしないものを選んでください。
3.休憩中もスマートフォンを見ている
パソコン作業を中断しても、休憩中にスマートフォンを見続けていては、首や目は十分に休まりません。
休憩時間には、画面から目を離して立ち上がることが大切です。
水を取りに行く、窓を開ける、洗面所まで歩くなど、短い動作でも構いません。
「休憩=別の画面を見る時間」ではなく、「姿勢と視線を変える時間」と考えると続けやすくなります。
4.集中すると何時間も座り続けてしまう
自宅では周囲から声をかけられる機会が少なく、仕事を止めるきっかけがありません。
気づけば昼食まで座りっぱなしだった、という人もいるでしょう。
情報機器を使う作業では、連続した作業が1時間を超えないようにし、次の作業までに10~15分程度の休止時間を設けることが一つの目安になります。
休止時間をすべて休憩にできない場合でも、資料整理、電話、印刷物の確認など、画面を見続けない作業を挟む方法があります。
1時間の途中にも、姿勢を変える小休止を1~2回入れてみてください。

5.仕事を終える時間が曖昧になっている
リモートワークでは、通勤という区切りがありません。
仕事が終わってもパソコンが目に入るため、「もう少しだけ」と作業を続けてしまうことがあります。
長時間労働や緊張した状態が続くと、肩に力が入ったままになり、疲労も抜けにくくなります。
業務終了後はパソコンを閉じる、机の上を片づける、仕事用の照明を消すなど、終了を知らせる行動を決めておきましょう。
肩と腰がつらいときに見直したい作業環境
画面は40cm以上離す
ディスプレイとの距離は、おおむね40cm以上を確保します。
画面が遠くて文字を読みにくい場合は、顔を近づけるのではなく、文字の表示倍率を上げましょう。
小さな文字を読み続けると、無意識に首が前へ出やすくなります。
画面の上端は目の高さか、やや下にする
ディスプレイの上端は、目の高さとほぼ同じか、少し下になる位置が目安です。
画面が高すぎると首を反らし、低すぎると下を向き続けることになります。
特に遠近両用眼鏡を使用している人は、画面を見るためにあごが上がっていないか確認してください。
キーボードとマウスを体の近くに置く
キーボードやマウスが遠いと、腕を前に伸ばし続ける姿勢になります。
肩をすくめず、肘を体の近くに置いて操作できる位置まで引き寄せましょう。
マウスを動かす場所が狭い場合は、机の上にある書類や小物を減らすだけでも負担を抑えやすくなります。

背もたれを使う
背筋を伸ばした姿勢を自力で保ち続けると、背中や腰の筋肉が疲れてしまいます。
椅子に深く腰掛け、背もたれに背中を預けましょう。
腰と背もたれの間が空きすぎる場合は、薄いクッションや丸めたタオルを挟む方法もあります。
ただし、厚すぎるクッションは腰を前へ押し出すことがあります。楽に座れる厚さに調整してください。
仕事中に取り入れたい簡単な体の動かし方
痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。
大切なのは、固まった姿勢をいったん解除することです。
肩を上げてから力を抜く
両肩を耳に近づけるようにゆっくり上げ、数秒後に力を抜いて下ろします。
呼吸を止めず、数回繰り返します。
肩甲骨を軽く寄せる
胸を強く張るのではなく、左右の肩甲骨を背中の中央へ軽く寄せます。
肩が上がらないよう注意しながら、ゆっくり戻します。
立って数歩歩く
立ち上がって、その場で足踏みをするだけでも姿勢は変わります。
飲み物や必要なものを、あえて少し離れた場所に置く方法もあります。
腰を反らしすぎない
座り続けた後に急に腰を強く反らすと、痛みが増す場合があります。
最初はゆっくり立ち上がり、歩いたり体の向きを変えたりする程度から始めましょう。
動かしたときに痛みやしびれが強くなる場合は中止してください。
ブルーライトカット眼鏡だけでは肩こり対策にならない
パソコン作業による目の疲れを、すべてブルーライトの影響と考えるのは適切ではありません。
画面を長時間見続けると、まばたきが減ったり、近い距離に焦点を合わせ続けたりします。
目が疲れると画面へ顔を近づけやすくなり、その姿勢が首や肩への負担につながることはあります。
ただし、ブルーライトカット眼鏡をかければ肩こりや眼精疲労が解消するとは限りません。
画面との距離、文字の大きさ、明るさ、休憩の取り方を先に見直しましょう。
高価な椅子を買えば腰痛はなくなる?
高価なオフィスチェアでも、体に合わない高さや設定で使えば負担はかかります。
反対に、一般的な椅子でも、足台やクッションを使って姿勢を調整できる場合があります。
椅子を選ぶ際は、価格やブランドだけでなく、次の点を確認しましょう。
- 座面の高さを体に合わせて調整できる
- 背もたれに背中を預けられる
- 座面が深すぎず、膝裏を圧迫しない
- 足裏を床または足台につけられる
- 肩を上げずにキーボードを操作できる
椅子だけを交換するのではなく、机、画面、キーボード、足元を一つの作業環境として調整することが重要です。
肩こりや腰痛で医療機関を受診した方がよい症状
肩こりや腰痛のすべてが、姿勢や運動不足によるものとは限りません。
次のような症状がある場合は、自己判断でストレッチやマッサージを続けず、医療機関へ相談してください。
- 腕や脚にしびれ、痛み、力の入りにくさがある
- 歩きにくさや感覚の異常がある
- 転倒や事故の後から強い痛みが続いている
- 安静にしていても強く痛む
- 痛みが徐々に悪化している
- 発熱など、痛み以外の症状を伴っている
- 排尿や排便の異常、股の周辺の感覚異常がある
排尿・排便の異常や脚の急な脱力を伴う場合は、まれではありますが緊急の対応が必要な病気もあります。
肩、首、腰、手足のしびれなどは、まず整形外科への相談が選択肢になります。
目の痛み、強い充血、視界の異常などがある場合は、眼科への相談も検討してください。
椅子を買う前に、まず1時間の過ごし方を変えてみる
リモートワークの肩こりや腰痛は、一つの原因だけで起こるものではありません。
高価な椅子や健康器具を購入する前に、画面を上げる、足を安定させる、文字を大きくする、1時間ごとに立つという小さな変更から始めてみましょう。
完璧な姿勢を長時間保とうとするよりも、同じ姿勢を続けないことが大切です。
痛みを我慢しながら働き続けるのではなく、体がつらくなる前に作業を止める仕組みをつくってください。

出典
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
- 厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
- 日本整形外科学会
- 日本眼科学会・日本眼科医会ほか「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」









