
2026年上半期、企業が競うように発信した言葉は「AI」でした。
その一方で、若者の間から聞こえてきたのは「ば・く・れ・つ♡」「〇〇すぎて滅!」という軽快なフレーズ。手元では、ぷっくりしたシールを集めて友達と交換するシール帳が再び開かれています。
最先端のAIと、どこか懐かしい平成女児カルチャー。
一見すると正反対に見える2つの流行ですが、詳しく見ていくと、2026年を生きる人たちが何を手放し、何を求めているのかが浮かび上がってきます。
気になる内容からチェック
- 1 2026年上半期のトレンドワード、先に見えた2つの流れ
- 2 注意したいのは「Googleの検索ランキング」ではないこと
- 3 ビジネストレンド1位は「AI」だった
- 4 AI以外では人材・地域・酷暑も企業の関心を集めた
- 5 若者トレンドはM!LKが3部門を席巻
- 6 「ば・く・れ・つ♡」「〇〇すぎて滅!」はなぜ広がった?
- 7 バズったミーム1位は『夜の踊り子』
- 8 シール帳とボンボンドロップシールが若者の手元に戻った
- 9 トモダチコレクションは「懐かしい人」と「初めての人」をつないだ
- 10 ドバイチョコもちと麻辣湯、食は「味+刺激」の時代へ
- 11 企業は効率を求め、若者は心が疲れない楽しさを選んだ
- 12 2026年下半期も見逃せない3つの変化
- 13 最先端と懐かしさが同時に流行した半年
- 14 出典
2026年上半期のトレンドワード、先に見えた2つの流れ
2026年上半期のトレンドは、ビジネスと若者カルチャーで大きく二極化しました。
| 分野 | 大きな流れ | 象徴するワード |
|---|---|---|
| ビジネス | AIを試す段階から、仕事を任せる段階へ | AIエージェント、フィジカルAI、GEO、LLMO |
| 若者カルチャー | 重い共感より、軽いテンションと遊び心へ | ば・く・れ・つ♡、〇〇すぎて滅! |
| モノ・体験 | デジタルだけでなく、触れて交換できるものへ | シール帳、ボンボンドロップシール、スクイーズ |
| エンタメ | 楽曲が歌だけで終わらず、言葉やミームへ | M!LK、爆裂愛してる、好きすぎて滅! |
| グルメ | 味だけでなく、食感や動画映えも楽しむ | ドバイチョコもち、3Dフルーツアイス、麻辣湯 |
企業は面倒な仕事をAIに任せようとし、若者は心を重くしない楽しさを選ぶ。
向かっている方向は違っても、どちらにも「負担を減らし、気持ちよく過ごしたい」という感覚が表れています。
注意したいのは「Googleの検索ランキング」ではないこと
今回取り上げるランキングは、GoogleやYahoo!で検索された回数を直接集計したものではありません。
PR TIMESは、企業がプレスリリースを発表するときに登録したキーワードの件数を分析しています。
対象となったのは、2026年1月から5月までに公開された19万9,535件のプレスリリースです。
一方、若者カルチャーは、Simeji・WEGO・マイナビがそれぞれ実施したアンケートをもとにしています。
| 調査 | 主な対象 | 回答・分析規模 |
|---|---|---|
| PR TIMES | 企業のプレスリリース | 19万9,535件 |
| Simeji | 29歳までの男女 | 6,664人 |
| WEGO・WE LABO | 9つのSNSコミュニティのフォロワー | 5万7,808回答 |
| マイナビティーンズラボ | 13~19歳の女性 | 610人 |
つまり、企業が何を事業機会として発信したのか、若い世代が何を「流行った」と感じたのかを比べたランキングです。
検索回数そのものではありませんが、社会の関心がどこへ動いているのかを知るうえでは、非常に興味深いデータになっています。
ビジネストレンド1位は「AI」だった
PR TIMESの総合ランキングでは、「AI」が初めて1位になりました。
1月から5月まで、月別ランキングでもすべて1位を記録しており、一時的なブームではなく、企業活動の土台として定着したことがわかります。
AI関連ワードの件数と伸び率
| 位置づけ | キーワード | 発信件数 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 総合1位・急上昇1位 | AI | 11,920件 | 1.64倍 |
| 総合5位 | 生成AI | 5,386件 | 1.34倍 |
| 急上昇2位 | AIエージェント | 2,413件 | 2.77倍 |
| 急上昇3位 | AI活用 | 1,068件 | 2.73倍 |
| 急上昇9位 | フィジカルAI | 371件 | 46.38倍 |
| 急上昇11位 | LLMO | 390件 | 11.14倍 |
| 急上昇20位 | GEO | 239件 | 21.73倍 |
注目したいのは、「AI」という言葉の件数だけではありません。
2026年上半期は、AIとの関わり方を表す言葉が細かく分かれ始めました。
AIを「使う」から「任せる」へ
これまでの生成AIは、質問への回答、文章作成、画像生成など、人間を手助けする使い方が中心でした。
しかし、急上昇2位に入った「AIエージェント」は、指示された作業を補助するだけでなく、目的に合わせて判断し、必要な処理を進めるAIを指します。
たとえば、次のような業務です。
- メールの内容を確認して返信案を作る
- 売上データを集計して報告書にする
- 顧客からの問い合わせ内容に応じて処理を振り分ける
- 必要な情報を探して複数のシステムへ入力する
「ChatGPTに質問する」だけでなく、仕事の途中から最後までをAIに任せたい。
AIエージェントが2,413件、前年同期比2.77倍まで増えた数字には、企業の期待が「便利な相談相手」から「実際に働く存在」へ変わってきたことが表れています。
46.38倍になったフィジカルAIとは
増加率で際立っていたのが「フィジカルAI」です。
フィジカルAIとは、画面の中で答えを出すだけでなく、ロボットや自動運転などを通じて、現実世界のモノを認識し、動かすAIを指します。
発信件数は371件と「AI」全体に比べれば多くありません。しかし、前年同期比は46.38倍に達しています。
セミナーや展示会だけでなく、実際の製品に関する発表も増えていることから、単なる未来構想ではなく、事業化へ向かい始めた分野として注目されています。
AIが文章を書き、次に仕事を進め、さらにロボットや車を動かす。
2026年上半期は、AIが画面の外へ出始めた半年ともいえそうです。
SEOの次に「GEO」「LLMO」が注目された理由
企業のマーケティングに関わる人にとって、見逃せないのが「GEO」と「LLMO」です。
| ワード | 発信件数 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| GEO | 239件 | 21.73倍 |
| LLMO | 390件 | 11.14倍 |
| AIO | 229件 | 6.94倍 |
| AI検索 | 157件 | 13.08倍 |
GEOは、生成AIが回答を作るときに、自社の商品や情報が参照されやすくなるよう整える考え方です。
LLMOやAIOも定義や使われ方に違いはありますが、従来の検索結果だけでなく、生成AIによる回答の中で自社の情報を見つけてもらうことを意識した言葉として広がっています。
ただし、GEOがSEOをすぐに置き換えるわけではありません。
生成AIも、信頼できる公式情報やWeb上のコンテンツを参照して回答を作ります。企業に求められるのはSEOを捨てることではなく、誰が読んでも意味が明確で、根拠や発信元を確認できる情報を積み重ねることです。
「人に見つけてもらう」だけでなく、「AIにも正しく理解してもらう」。
情報発信の相手が、人間だけではなくなり始めています。
AI以外では人材・地域・酷暑も企業の関心を集めた
ビジネストレンドをAIだけで片づけることはできません。
急上昇ランキングには、働き方や地域連携に関する言葉も数多く入りました。
- 4位:人材育成
- 7位:健康経営
- 8位:地域活性化
- 12位:ウェルネス
- 13位:人的資本経営
- 16位:福利厚生
- 18位:官民連携
- 19位:産学連携
AIによる効率化が進む一方で、人材をどう育て、健康をどう守り、社外とどう連携するかという課題も強く意識されています。
制度や社会環境の変化を受けて、次の言葉も伸びました。
| キーワード | 発信件数 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| ステーブルコイン | 245件 | 4.62倍 |
| 系統用蓄電池 | 155件 | 4.84倍 |
| データセンター | 270件 | 2.03倍 |
| 酷暑 | ― | 2.79倍 |
AIを動かすには、データセンターと大量の電力が必要です。その電力を安定して供給するため、蓄電池や省エネ設備への関心も高まります。
AIという一つの技術が、電力、建設、地域政策、金融など、離れて見えた産業へ波及していることも2026年上半期の特徴です。
若者トレンドはM!LKが3部門を席巻
若者カルチャーで最も強い存在感を見せたのは、5人組ボーカルダンスユニットのM!LKでした。
マイナビティーンズラボの10代女子ランキングでは、次の3部門で1位を獲得しています。
| 部門 | 1位 |
|---|---|
| ヒト部門 | M!LK |
| ウタ部門 | 『爆裂愛してる』 |
| コトバ部門 | 「〇〇すぎて滅」 |
WEGOの界隈別調査でも、『爆裂愛してる』は8界隈のうち7界隈でミュージック部門1位になりました。
さらにSimejiでは、M!LKの『好きすぎて滅!』がバズったアーティスト部門1位、『爆裂愛してる』が3位。俳優部門では、メンバーの山中柔太朗さんが1位に選ばれています。
歌がヒットしただけではありません。
楽曲の一部が切り取られ、言葉になり、振り付けになり、日常会話やSNSのコメント欄へ入っていく。2026年上半期のヒットは、一曲を最初から最後まで聴くだけでは終わらない広がり方をしています。
「ば・く・れ・つ♡」「〇〇すぎて滅!」はなぜ広がった?
Simejiとマイナビでは順位が入れ替わっていますが、上位に選ばれた言葉はほぼ共通しています。
Simeji・気になる言葉TOP3
| 順位 | 言葉 |
|---|---|
| 1位 | ば・く・れ・つ♡ |
| 2位 | 〇〇すぎて滅! |
| 3位 | 人の心とかないんか? |
マイナビ・コトバ部門TOP3
| 順位 | 言葉 |
|---|---|
| 1位 | 〇〇すぎて滅 |
| 2位 | ば・く・れ・つ♡ |
| 3位 | ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど |
共通するのは、短く、リズムがあり、細かな説明をしなくても感情が伝わることです。
「かわいすぎて滅」「眠すぎて滅」「お腹空きすぎて滅」のように、前半を入れ替えれば、さまざまな場面で使えます。
深刻に気持ちを語らなくても、ひと言で感情の大きさを共有できる。真剣すぎず、少し笑える余白もあります。
2026年上半期の若者言葉は、気持ちを正確に説明する言葉というより、同じテンションを一瞬で共有する合図に近いのかもしれません。
バズったミーム1位は『夜の踊り子』
M!LKの楽曲が言葉部門を席巻した一方で、Simejiのミーム部門1位は、サカナクションの『夜の踊り子』でした。
| 順位 | ミーム |
|---|---|
| 1位 | 夜の踊り子 |
| 2位 | ワホー |
| 3位 | 僕の勝ちだ お前の負けだ(ジェームズミーム) |
『夜の踊り子』は、もともと2012年に発表された楽曲です。
インドネシアの伝統的なボートレース「パチュ・ジャルール」の映像と組み合わせた動画が拡散され、10年以上の時を経て再び若い世代へ届きました。
新しいコンテンツだけが流行するとは限らない。
過去の楽曲やゲーム、キャラクターが、短い動画やミームと結びつくことで、まったく新しいものとして再発見されています。
シール帳とボンボンドロップシールが若者の手元に戻った
デジタルネイティブと呼ばれる若い世代の間で、紙のシール帳が大きなブームになったことも象徴的です。
Simeji・バズったモノTOP6
| 順位 | モノ |
|---|---|
| 1位 | ボンボンドロップシール |
| 2位 | メロジョイ(スクイーズ) |
| 3位 | トモダチコレクション わくわく生活 |
| 4位 | 平成女児シール帳・シール交換 |
| 5位 | めじるしチャーム |
| 6位 | ドバイチョコもち |
マイナビのモノ部門でも、1位はシール帳でした。
| 順位 | モノ |
|---|---|
| 1位 | シール帳 |
| 2位 | ドバイチョコ餅 |
| 3位 | トモコレ |
| 4位 | メロジョイ |
| 5位 | ぽこ あ ポケモン |
| 6位 | ヨアジョン |
なかでも人気なのが、ぷっくりした立体感と透明感を持つボンボンドロップシールです。
シール帳は見るだけのアイテムではありません。
お気に入りを集め、並べ方を考え、友達と見せ合い、交換する。完成したシール帳を撮影すれば、SNSにも投稿できます。
アナログかデジタルかの二者択一ではなく、現実で触れて遊んだものを、SNSで共有するところまでが一つの体験になっています。
トモダチコレクションは「懐かしい人」と「初めての人」をつないだ
『トモダチコレクション わくわく生活』は、Simejiのモノ部門3位、マイナビでも「トモコレ」として3位に入りました。
シリーズの完全新作としては約13年ぶりです。
過去作を遊んだ世代にとっては待ち望んだ復活ですが、現在の10代にとっては新鮮なゲームでもあります。
自分や友達に似たキャラクターを作り、予想外の人間関係や会話を楽しむ。そこで起きた面白い出来事をスクリーンショットや動画で共有しやすい点も、今のSNS文化と相性が良いのでしょう。
平成に生まれたコンテンツが、そのまま復刻されているのではありません。
令和の遊び方や共有方法を加えられ、別の世代へ受け継がれています。
ドバイチョコもちと麻辣湯、食は「味+刺激」の時代へ
若者のグルメトレンドでは、味だけでなく、見た目、食感、音まで楽しめるものが目立ちました。
WEGOの界隈別ランキングでは、麻辣湯がJK・韓国・地雷・ギャルの4界隈で1位。ドバイチョコもちもダンサー界隈とガーリー界隈で1位に選ばれています。
WEGOのグルメ部門で目立ったワード
| グルメ | 主なランクイン状況 |
|---|---|
| 麻辣湯 | 4界隈で1位 |
| ドバイチョコもち | 2界隈で1位、複数界隈で2位・3位 |
| 3Dフルーツアイス | 複数界隈で2位・3位 |
| ONICHA | 3界隈で3位 |
| ヨアジョン | JK界隈で3位 |
ドバイチョコもちは、柔らかい餅の中に、ピスタチオクリームやザクザクしたカダイフを組み合わせたスイーツです。
一口食べたときの食感に意外性があり、断面も動画映えします。
3Dフルーツアイスやスクイーズにも共通するのは、見た瞬間に気になり、触った感触や食べた音まで確かめたくなることです。
「おいしいから流行る」だけでなく、「誰かに見せたくなる体験」が人気を押し上げています。
企業は効率を求め、若者は心が疲れない楽しさを選んだ
企業側では、AIに業務を任せ、判断や作業の負担を減らそうとする流れが強まりました。
若者側では、口に出したくなる楽曲、短く笑える言葉、手で触れられるシールやスクイーズが支持されています。
マイナビの分析では、2026年上半期の10代女子は、重い共感だけでなく「軽やかさ」や「テンション」を重視しているとされています。
WEGOも、シール帳やスクイーズなどの流行を「リアルな趣味」と「子ども心」の組み合わせとして捉えています。
企業が求めたのは、仕事を止めないための賢さ。
若者が求めたのは、その場の空気を重くしない楽しさ。
形は違っても、どちらも複雑さや疲れから少し距離を置き、自分の時間や気持ちを守ろうとする選択に見えます。
2026年下半期も見逃せない3つの変化
AIエージェントは「導入」から「成果」へ進めるか
AIエージェントという言葉はすでに広がりました。
下半期は、導入したという発表だけでなく、どの業務を任せ、時間やコストをどれだけ削減できたのかという具体的な成果が問われていきます。
GEOやLLMOは企業の標準施策になるか
生成AIに情報を見つけてもらうための対策は、まだ呼び方や定義が統一されていません。
それでも、GEO、LLMO、AIO、AI検索という複数の言葉が同時に伸びた事実から、企業の関心が高まっていることは明らかです。
下半期は、単なる新語で終わるのか、Web制作や広報の現場へ定着するのかが注目されます。
平成レトロは「懐かしいモノ」から「一緒に遊ぶ体験」へ
シール帳や平成プリが支持された理由は、デザインが懐かしいからだけではありません。
シールを交換する、一緒にプリクラを撮る、ゲーム内に友達を登場させるなど、人とのやり取りが含まれています。
平成レトロは、昔のモノを再現するブームから、当時のコミュニケーションを今の世代が体験する流れへ変わりつつあります。
最先端と懐かしさが同時に流行した半年
2026年上半期、企業の中心にはAIがありました。
AIは「使うもの」から「仕事を任せるもの」へ進み、フィジカルAIによって現実のモノまで動かそうとしています。企業の情報発信も、Google検索だけでなく、生成AIに見つけてもらうことを意識し始めました。
その一方で、若者の手元にはシール帳が戻り、口元からは「ば・く・れ・つ♡」「〇〇すぎて滅!」という言葉が飛び出しました。
新しい技術だけを追いかけた半年でも、昔を懐かしんだだけの半年でもありません。
面倒なことは賢い技術に任せたい。でも、人と笑ったり、触れたり、交換したりする時間までは手放したくない。
AIとシール帳が同時に流行した風景には、効率だけでは満たされない今の気持ちが、思った以上にはっきり表れているのかもしれません。
出典
- 株式会社PR TIMES「フィジカルAIは46倍超、2026年トレンドワードランキング―約20万件の企業発表を分析―」
- バイドゥ株式会社・Simeji「α・Z世代が選ぶ!! 2026年上半期トレンドランキング」
- WEGO・WE LABO「αZ世代が選ぶ!“界隈別”2026年上半期トレンドランキング」
- 株式会社マイナビ・マイナビティーンズラボ「10代女子が選ぶ2026年上半期トレンドランキング」









